冷た い雨が 降りしきる 九月 の ある日 …
墓地は しんと 静まり返り 薄暗かった
帰りかけた その時 ブチャイクが 横切って 行った

お〜い! どこぞへ 行くん?
こちらの 声が 届かぬのか 彼にしては 珍しく
先を 急いでいるようだった
ははん さては ヒ ミツの基地に ゆくのだろう
あたしは 好奇心に 駆られ 彼のあとを 追った

テッ テッ テッ …  テッ テッ テッ …
この先から 道路を 渡れば ヒ ミツの基地だ
だが 足は 金木犀の甘い香りに 誘われ 止まっていた
一面に 散り 乱れた オレンジ色 の 小花 …
雨に 打たれ キラキラと 輝くさまは とても うつくしかった

不意に 軽い 衝撃を 覚え 思わず シャッターを 切った
無論 この暗さでは 無理であろう
それでも なぜか その場から 離れられずにいた
おかげで 彼を 見失ってしまったが
次第に 雨足は 強まり 渋々 墓地を 後にした

出し損ねていた フィルムを ようやく 手にしたとき
あたしは 涙が とまらなかった
一見にして 失敗と 解る それは …
どうにも 云い知れぬ 哀しいさに 揺れていたからだ
それが なにを 意味するのか …

甦る 金木犀 の かほりの中に
彼のすがたが ゆっくりと 浮かんで 消えた
あの時 雨に 打たれ 散り 乱れた 金木犀の花のように …
彼が あたしを 此処に 導いたに 違いなかった

2002/09
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