2003/04




花宵の波 が 押しよせるころ

チビは カラス森 の 塔裏で ひっそり と 息 を 潜めていた


小雨舞う ある日 墓地は 束の間の しずけさ に ぼんやりしていた

突然 自転車に 乗った おじさん が 声 を かけてきた

あたしは ドキッ と して とっさ に きつい 視線 を 投げた

自分の中に 同居する やましさ に あせり を 感じたからだ

おじさんは 自転車 を 止め にこにこ と 笑いながら

「 エサやってくれて ありがとうねぇ! 」 と 云った

「 アナタ に レイ を イワレル スジアイ は アリマセン! 」

あたしは そう 思いながらも わるい気はしなかった


おじさんは た いそう おしゃべり な人で

自分は 何も 出来ないからこそ せめて 亡骸ぐらいは

埋葬してやろうと 思い 墓地 を 回っているのだと 云う

「 ほら そこの猫みたいに なんとかって 病気に なると

  もう ダメ なんだ なぁ …  すぐに 死んじゃうんだ よ …  」

あたしの足元には ちっちゃな チビ が いつに なく ちいさ く

雨に 打たれなが ら うずく まって いた
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