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ある日 突然 見知らぬ ご婦人に 呼び 止められた
その手は 幾つもの ゲージ を 引き 摺り
無数 の 悲鳴 が それら を 覆った
寸足らず の 白い布 を 突き上げていた
ご婦人は 困惑する こちら の 都合も かまわず
手 を 貸すのが 当然だと 云わんばかりに
あれこれ と 命令口調で 指示 を 飛ばした
無論 自分とて ことあらば 及ばずながらも
手伝い を 申し出る 気持ちぐらいは 持っている
だが それは むしろ 己の正義 を 誇示するかの 如く
終始 傲慢であった
バラバラ と 放たれた 彼ら が 遠ざかってゆく
その中には 出産 を 間近に 控えた
なじみ の すがた も あった
訊きたいことは 山ほど あった
だが はげしい 吐き 気 を 覚え とても ご婦人 と
向き 合う 気には なれなかった
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2003/05
-D -
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